勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

カラオケを通してしる、それぞれの歩み

 6月度の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」は、17日開催。たまにはお酒でものみながらメンバー間の親交を深め、人柄をよく知りさらなる理解へと結びつけたいという思いから、台東区内のカラオケ店での開催という画期的なカフェとなった。お披露目した楽曲は次のとおり。

・都はるみ 「大阪しぐれ」
・八代亜紀 「雨の慕情」
・高田恭子「みんな夢の中」
・竹内まりあ「シングルアゲイン」
・中島みゆき「糸」「地上の星」
・小柳ルミ子「私の城下町」
・石川さゆり「天城越え」
・テレサテン「夜来香」
・村田英雄 「王将」
・ピンクレディー「渚のシンドバッド」「カメレオン・アーミー」
・アグネス・チャン「ひなげしの花」
・zard 「負けないで」
・アミン「待つわ」
・松田聖子「あなたに会いたくて」「赤いスイートピー」
・石原裕次郎「想い出はアカシア」他。

 選曲によって人柄がわかるものだが、同時にパフォーマンスを通して意外性を知ることができ頼もしい。時代ごとにその人だけの想い出があり、その背景で流れていた想い出の音楽というものがある。自分史を語る時、当時の出来事、人物、音楽、映画、文学などを通して、懐かしい自分と再会することができる。

 がんを告知された私の知人は、現時点、さほど深刻な状況ではないが、もしもの時に備えて終活をはじめた。そのツールとして選んだのが自分史だ。自身の来し方を振り返り、なかなか昔の出来事や(当時の)みずみずしい想いがよみがえってこない時、年代別に流行した本・音楽・テレビ番組・ヒット商品などをたどり想い出に出会っていくというふうに。

 たとえば、昨年亡くなった人気歌手のひとり西城秀樹(ヒデキ)さん。彼のファンだった彼女は、13歳の時、ヒデキさんを知り夢中になる。それから高校卒業するまでずっと青春と共にヒデキさんがいた。初恋を経験し、大好きだった祖母の死があり、ブルース・リーの映画などがあった。一人の歌手の死から青春の日々、そして忘れられない出来事の数々が走馬燈のようにかけめぐり……。記憶はふとした瞬間にあふれ出てくるものだ。過去の自分と再会した彼女は、懐かしさに感激し、現在、なぜか疎遠になってしまった人たちと連絡をとっているそうだ。

 がん哲カフェのメンバーは3時間余歌い続けた。

 がん哲カフェでは、毎回の題目を考えてから集まったメンバーたちと議論を交わすのだが、いつか論じたいテーマに「著名人とがん」がある。

 この日、歌った歌手たちの数人は、すでに他界している。がんのため生命を落とした著名人には、今年GIST(消化管間質腫瘍)という稀少がんで長く闘病していたショーケンや肝臓がんのため52歳の若さで亡くなった「昭和の大スター」石原裕次郎がいる。この2人の代表作といえば、昭和の刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ!」だ。松田優作もこのドラマ出身で、やはりがん死した。

 アグネス・チャンや岡村孝子は女性特有のがんを患いながらもサバイバルしている。

 がんで逝った人、闘っている人……ファンの心を奪ったスターたちは、私たちの記憶の中でいつまでも生き続けることだろう。

【2019/6/17 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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