毎月開催の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来哲学メディカルCafé」(以下、「がん哲カフェ」と表記)、1月度は年明けすぐの1月6日、2月度は節分の日の翌日2月3日夜に開催されました。多くの方々が繁忙期を過ごされている中、ハイブリット開催(リアル、オンライン共)でしたが両日ともに4~5名での集いでしたためテーマをもうけずフリートークとなり、メンバーの活動報告や時事問題などについて話しました。
勝海舟記念下町浅草がん哲学外来テーマ曲「ほっとけ」を作詞作曲した3人組音楽グループ「わをん」は、それぞれ仕事をもちながら音楽活動を続けています。前日(2/2)、小田原市内で行われた「わをん」のコンサートを鑑賞してきたばかりの宮原富士子さん(がん哲カフェ主宰者)が、「信じる/繋がる/広がる」をテーマにした充実した内容だったと満足そうな表情で報告しました。
また、今夏、大分で開催される「がん哲学外来市民学会 第13回」の準備報告をオンライン参加した阿部純子さんが行いました。
がん哲カフェは全国津々浦々に存在しますが、残念ながら九州地方にはわずかなカフェしかありません。交通手段だけでなくITツールを利用して地の果ての異国の方々とも繋がる現代社会、世界は随分近くになったという感想をもちます。それだけにこの事実はとても残念、是非この機会に九州の方々にも「がん哲学外来」の存在を広く知ってもらいたいものです。
普段の仕事や時事問題から気になっていることを取り上げたのは「人権問題」でした。 昨年からワイドショーを賑わしているフジテレビとタレントの中居正広氏の女性に対する人権問題関連の報道は2月になっても続いていることから、「人権問題」に関して「高額療養費制度(負担額)引きあげ」問題について考えました。
がん治療の場合、手術や抗がん剤治療などにかなりのお金がかかります。亡くなった私の家族の闘病中、主治医から抗がん剤治療を勧められた際、高額な値段をきき驚いたものです。どうやって支払いをしようかと思い悩んでいたところ、高額療養費制度のことを知りホッとしたことを覚えています。
それでも、経済的な問題から高額な抗がん剤治療を断念する方も存在します。抗がん剤治療が嫌だからではなく、他の治療法を受けたいからでもなく、ただおカネがないので断念せざるを得ないというのは何とも悲しい現実です。
格差社会の日本では、経済的に余裕がある方々は選択肢がいくつもありますが、貧困層にはない……。ならば、おカネがない階級(こういう表現は抵抗がありますが)に属する者には生きる権利がないのでしょうか?
継続治療が必要ながん患者に対する無理解としか思えない制度は、がん患者の生きる希望を奪うものですから、制度の見直しが必要なのは言うまでもありません。
1月28日、経済アナリストの森永卓郎さんがん闘病の末に死去されました。死の数日前まで精力的に仕事をされおカネのことを教え続けた、まさに“生ききった”森永さんはこの報道をどう思っていらっしゃるでしょうか。
「高額療養費制度(負担額)引きあげ」報道を聞いた時、以前、生活保護受給者にはエアコンをつける権利がない、という議論がなされたことに通じるのではないかと思ったのは私だけでしょうか。がんばらなかったから生活保護をうける身となった、それは自己責任であって、国民の税金で生活することを思えばエアコンをつける資格などない、という理論は必ずしもあたっているわけではありません。自然災害などに被災された方など予期せぬ事態の結果そうなった方もいらっしゃるのです。
地震大国日本で被災した方々……家や財産をなくし不本意な住居に住まざるを得ない方々は、「不運」の一言でかたづけられるしかないのでしょうか。埼玉県内でおきた道路陥没事故から一週間が経過した今(2/4現在)、いまだに穴に落ちた方の生存確認ができていません。日本各地で大雪警報がだされている中、救助活動が続き市民生活にも影響がでています。不運は誰の身にも起こりうる可能性があります。
がん哲学外来は、がんに罹患しそれまでの人生を見直す必要が生じた方々が集う対話の場です。なりたくてがんになった方は(おそらく)皆無です。それでも、「がんになってもがんでは死なない」とがんばる方々です。明日を信じ、繋がり、希望を持ち続け……。。
※一般社団法人がん哲学外来 http://www.gantetsugaku.org/index.php
【2025/2/2 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)