勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

小さな幸せ、小さな役割、小さなやりがいを大事に

 2022年5月度の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、5月30日夜7時から開催されました。コロナもロシアとウクライナの戦争はまだ終わりませんが、時が進む限り人の世では様々なことがおこりメディアの扱い方も変わってきます。
  最近のメインニュースは山口県阿武町の誤入金事件でしたが、本日(5/31)の報道では家族ぐるみでコロナ対策の持続化給付金不正受給に関わったとして三重県在住の家族が逮捕、主犯格の男(父親)は海外逃亡中で指名手配という事件です。阿武町の事件では4630万円でしたが、こちらは約9億6千万円という破格の金額で驚く他なく行政側の失態は免れません。どうして国民の血税が詐欺師にわたってしまうのでしょうか。
  悪意まみれの世の中では誰もが詐欺の被害にあわないように(特に高齢者向けに)注意喚起がなされていますが、担当した一部の人の責任とせず全体の教育を徹底するなど行政側には今一度対策をしっかり練ってもらいたいものです。
  怒りとため息まじりにこの原稿を書いていましたら、中学校男子教師が女子高校生を盗撮したとして逮捕されるという事件報道。「センセイ」とよばれる職業についている人がこんな嘆かわしい事件を起こしてしまうとは……。事件がおきると謝罪する側はかならず、「二度と同様の事件がおこらないように教育・指導していきます」といった声明をだしてきましたが、残念なことに繰り返されてしまいます。珍しい事件ではないだけに、再び疲労感に襲われてしまいました。

 今月のがん哲カフェに全国から参加した人は、私以外は全員医療従事者で、経験をつんだベテランばかり。4月にフレッシュマンと一緒に働くことになった人もいます。今回は、働き方が転換期を迎えていることもあり、<働くということ>について話し合いました。
  この日、参加者の多くが薬剤師。実は、薬剤師は女性が圧倒的に多い職業ですが、医師や看護師など様々なプロが集まる医療業界の中で一番「ジェンダーギャップ指数が低い」世界なのです。ジェンダーギャップ指数が低いのは日本全体の傾向で深刻な社会問題ですが、低いと当然、男女不平等となり女性差別が発生する可能性が高くなります。この件に関して、がん哲カフェ主宰者の宮原富士子さんは自身のブログで次のように語っています。

****** 宮原富士子 (2022-1-17) FB 投稿 ******

 この世界は、実に巧妙に面白い側面を持っていると思っている。 薬剤師そのものの本質を問う場面は実に少なく、所属する薬局の在り方やビジネスモデルとしての外部介入が裏で多く存在しながら、表面的には薬剤師・薬局の在り方という名のもとに展開されている業界。
~~~~中略~~~~~
  薬剤師の35%が男性で薬局経営者の7割が男性。薬剤師会の幹部の多くが男性というジェンダーギャップ的に非常に特徴ある業界の在り方なんだろうと笑えるほどあたっている。

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 数がものをいう世界、女性が多い業界ならば、女性が責任あるポストにもっと就く可能性が高いはずなのになんとも残念な限りです。 職場の仲間と一緒に仕事をする上では次のような感想がでました。

〇若い世代の傾向として、言われたことしかやらない、自主的に仕事をしようとしない。
〇若い世代にアドバイスすると、「パワハラ」や「やりがい搾取」ととられてしまうことがありやりづらいことがある。
〇苦労して薬剤師の資格をとっても、アルバイト的な働き方しかしない人もいる。働く意識は人それぞれだと思うが、正直もったいないと思う。

 現在放送中のTVドラマ「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?」(毎週水曜日夜10時放送)のヒロイン、マリリンのように明るく上昇志向があり退屈が大嫌い、「仕事がないなら作ればいい!」と奮起していくガッツある女子は好感がもてますが、価値観は人それぞれですから共感できない人はどういう感想を持つのか聞いてみたいものです。
  政府の規制改革推進会議は医療・介護現場の人手不足を解消するために、あれこれ対策を考えているようです。コロナ禍の中、医師や看護師ばかりに負担がかり疲弊している現実は認めますが、薬に関わる薬剤師に負担がかかっていないということは全くありません。多職種連携の現場ではそれぞれの職能に応じて権限があるため、やれると思うことでも手をだしてはいけない規律が存在します。

 家族ががんに罹患したことで、浅草のがん哲カフェに参加するようになり6年目。そして、カフェに出入りする医療・介護業界の方々の献身的な仕事ぶり、高いプロ意識、仕事への矜持、学習意欲などを目の当たりにしてきました。私自身は、違う業界に身を置きますが、ライフワークのがん哲カフェ、そのメンバーとしての役割、やりがい、誰かのために何かをする喜びに小さな幸福を感じるこの頃です。

※「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?」
(毎週水曜日夜10時放送)https://www.ntv.co.jp/waru2022/


【2022/6/2 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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