勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

コロナの時代を生き抜く  
~必要としてくれる人が一人でもいるならば~

 唐突に出現し世界を震撼させた(続けている)新型コロナウイルス感染拡大のため今年4月からリアル開催を自粛していた「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、これまで継続してきたカフェの繋がりを絶やさないために、先月からオンラインによるカフェを実行しています。オンラインカフェ2回目は、8月17日夜(19時開催)開催されました。お盆休みは長いところで9連休をとった方は多いと思いますが、コロナ禍では思うように移動できず退屈な休暇となったことでしょう。

 そんな連休明けに行われたがん哲カフェには、移動はできなくても、バーチャル空間に全国から“がん哲”に関わる方たちが多数集いました。ゲストは、浅草のがん哲カフェ主催の「がん哲学外来シンポジウム」(毎年開催)にもゲスト参加されたことのあるあずま在宅クリニック院長の東英子先生。東先生は、大阪で「あずまやカフェ」を主宰しているがん哲主宰者の一人です。この日は、「がん哲学への思い “あずまやカフェを始めて、続けて、そしてこれから~」についてお話していただきました。

  誰もが苦しんでいるコロナ禍にあって、これまでどおりにいかなくなった日常をどう変えていくか、生活はできるのかなど、暗中模索の日々を送っておられることでしょう。

 企業や団体は、生きていくために企業活動を継続し雇用している社員の生活を保証しなければなりませんが、感染拡大によって思うような活動ができず苦境に立たされています。疲弊し経営難に陥っている病院も多くあります。特定病院に通院や入院している医療をうける側の方々は治療を中断されるケースも多々あるようです。

 生活に影響がない人でも、通常の生活によってつながっていた人との絆が実感できず閉塞感を覚えていらっしゃることでしょう。

 全国津々浦々の地域で展開されているがん哲カフェ主宰者の思いも同じです。“がん”に関わる人たちが集まって密接に対話をする場であるがん哲カフェは三密に該当します。できるだけ広い空間で距離をおいてそれなりの工夫をして開催するにしても、がん患者さんが参加されると感染のリスクがきわめて高いからです。

 では、どうしたらいいのでしょうか? 主宰者たちは思い悩んできました……。そこで、今回は主宰者の一人である東先生のお話を聞き、皆で今後の展開についていろいろ語り合いました。

 東先生は泌尿科医でしたが、現在は大阪守口市に「あずま在宅医療クリニック」を開業し在宅医療に従事されています。医者といえども闘病もするし入院生活も経験します。過去、手術入院した際、自身と同じ医療者の冷たさを実感し愕然とした思いがあります。そんな先生をいやし励ましてくれたのは、実はがん患者さんだったそうです。痛みや苦しみを実感しているから他者に優しく思いやることができるのか。彼等は、先生を確かに救いました。その後、先生は回復し医師としての生活に戻りましたが、恩人の彼等は生命を終えていくという悲しい現実を突きつけられました……。

 そんな時、がん哲学外来と出会い感銘を受け、在宅医に転身し、さらに2013年には「カフェあずまや」を開設するに至りました。

 カフェでは、アットホームな場所作りを心がけ、一緒にご飯を食べたり、出かけたり、読書会をしたり、様々なイベントを企画してつながってきました。そこへ2020年、コロナがやってきたのです! 浅草のがん哲カフェと同じでリアル開催は難しく、「カフェあずまや」はズームを利用したオンラインカフェ(あZoomAや)を展開しています。

「コロナ禍ではソーシャルディスタンス(身体的距離)は必要ですが、フィジカルディスタンス(心の距離)は必須です。がん患者さん、患者さんの家族、遺族、医療関係者など、思うところあってがん哲カフェに集まった人たち……。彼等が一人でも必要としてくれるならば、繋がりの場(居場所)を続けていきたいです」と東先生は語る。

 オンライン参加された方々の中で、がん哲カフェ主宰者にお聞きしますと、次のような意見がでました。

「今後カフェをどうしたらいいか岐路にたって考えていたので、とても参考になった」
「親の介護をしていて時間に余裕があるとはいえないが、今後はズームを利用してカフェを継続していきたい」
「コロナ問題がいつまで続くか心配だが、カフェは続けていかなければと思う」

他には、「がんと闘っている患者さんの強さに触れ、救われたと感じている」という医療関係者(がん闘病中)の意見もありました。

「がん哲学外来」提唱者の樋野先生は、常々、「苦しみが品性を磨く」と説かれています。日本史上の超セレブ・浅井三姉妹(茶々、初、江)は、波瀾万丈・ドラマチックな人生ゆえ姉妹を語る際は「気が強ければ事はなる」という表現が使われます。表現者の想像力を刺激するキャラクターだけに、三姉妹の生き様は小説・テレビ・映画など形をかえて描かれてきましたよね。逆境にあっても戦国の世を逞しく生き抜いた三姉妹の物語は、色々な意味で参考になるはずです。

 苦しい時だからこそ、いったん立ち止まり原点にかえることは大事です。立場をこえて自由に本音で話し合った1時間半は、解決の糸口を確認できたリラックスタイムだったようです。 次回は、福井済生会病院の宗本義則先生がゲスト参加されます。どんなお話が聞けるか楽しみですね!

 

【2020/8/17 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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