勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

コロナの時代を生き抜く      
~奇をてらわず地道に人のために資する~

 一年遅れの東京オリンピックが終わると、コロナ感染拡大が一層深刻度を増し、「歯止めのきかない」「制御不能」「感染爆発」といった恐ろしい表現が出回るようになりました。各自治体はさらにコロナワクチン接種を加速させているようですが、あざわらうかのように中旬からは日本列島各地で大雨警報がだされ甚大な被害がでています。この原稿を書いている(8/20)現在、私の故郷九州に限っていえば、なかなか雨はふりやまない危険な状態になっています。
  気になってネット検索していましたら、「令和3年8月豪雨」とならび「7月豪雨」もでてきます。被災された方々には大変申し訳ありませんが、コロナに気をとられている間に、自然災害による被害がでているのに気にも留めていないとい情けなさ。報道を聞いた時は心が痛みましたが、すぐにまたコロナの現実に引き戻されるという日々の繰り返し……。猛暑の中、熱中症にも気を付けなければならず、本当に苦しい“コロナ2度目の夏”です。

 昨日(8/19)は、感染妊婦が受け入れてくれる入院先がみつからず、仕方なく自宅でうんだ新生児が死亡するという嘆かわしいニュースが流れ愕然としました。本日は、俳優の千葉真一さんがコロナによる肺炎でお亡くなりになりました……。
  2021年8月16日に開催された「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)では、久しぶりに無題(講師無し)で、「一人でも多くの人を救うために私たちができること」について話し合いました。この日集まった参加者は、全国津々浦々の医療・介護従事者(医師、薬剤師、保健師、看護師、ケアマネなど)が17人。

 私が暮らす東京都台東区では、ゴミの清掃員がゴミ分別作業中にコロナに感染するという悲しいニュースが流れました。燃えるゴミ、不燃ゴミの出し方をみても指示通りになっていなかったり、使い捨てのマスクが道路にポイ捨てされていたりする様を幾度か目にしたことがあります。こんな状態では、使用済マスクをきちんとビニール等にいれて捨てずに無造作に他のゴミと一緒にしていても不思議はないと思っていました。少し前にテレビのニュース番組でこの問題を取り上げていて心配していたところの報道でしたため、「あ~、遂に起きてしまった!」という思いでショックでした。 私の生活圏は町内会がしっかり機能していて、情報共有の徹底や助け合いの精神が生活に浸透している(はず)ので、「同じ台東区なのに……」という思いで少しおどろいております。
  コロナ患者に対応している医療者は、仕事の性質上、患者を通して感染するリスク大ですが、住民のだしたゴミによる感染も同じくリスク大、「労災」といっても過言ではありません。それを言うならば、在宅診療に携わる「がん哲カフェ」主宰者の“みやちゃん”こと宮原富士子さんも常にリスクに晒されています。改めて、医療・介護従事者の皆さんのご苦労に敬意を表したいと思います。

 この日、参加者から出た意見は次の通りでした。

○コロナ禍の中、メンタルに弱い人は暗示にまけて病気になるケースが目立つ。(医師)
○不必要に薬を飲む人が多いようだが、薬だけでは病気は治らない。医師や看護師などの生活指導が必要と思う。でも、誰もが多忙すぎて事務的な対応になり、そこまで手がまわらないのが現実のようだ。(薬剤師)
○一人暮らしの人(特に高齢者)は家庭内感染のリスクはないが、コロナに感染した時の対応が大変。(在宅医療看護師)
○薬にまつわる話題は尽きない。ジェネリック薬品は検証すべき。(薬剤師)

 コロナ禍だけではありませんが、人は一人では生きていけません。ならば、困った時に自分を助けてくれる隣人や友人などを5人はもっていたいものです。コロナの時代、“お互い様”の精神が大事だと痛感している人は少なくないはずです。一億人を救うのは難しくても、せめて自身がすむ(勤務する)地域の人々を救うことはできます。小さな波が大きな波となれば、救い、救われる生命が増えるはず。奇をてらわずこつこつと人のために資する。それは結果的に自分にも返ってきます。偉大なるお節介症候群は、がん哲学外来の基本精神です。引き続き、がんばっていきましょ~う!

【2021/8/16 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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