勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

がん哲活動 ~ここまでを振り返って~

 このコラムを書いているのは11月24日。通常なら上野公園の紅葉が楽しめるはずなのだが、今年は暖冬のようで残念ながらもう少し待たなければならないらしい。最近の話題はというと、やはり、カリスマ経営者・日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏の「ゴーン・ショック」だろう。ケタ外れの金額をよくもまぁ~いけしゃーしゃーとちょろまかし、ゴーン氏在籍中の十数年間、会社のほうも気づかなかった(?)ものだとあきれるばかり。一般人が一生かかっても拝むことができない30億とか50億とかいう大金を簡単に操作できるもんだと、ずっと貧乏な私は映画を見ているような気分になっている。

 ゴーン氏は確かに機能不全に陥っていた日本のビッグ自動車メーカーを立て直したのだろうが、その陰でこの会社に人生を捧げた方たちが存在し、リストラの憂き目にあったことを忘れてはならない。ともあれ、「カリスマ」が「容疑者」となったショッキングな事件の解明を急いでほしい。

 ということで、時に立ち止まって活動を見直すことは大事。

 11月の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」は、19日に開催された。この日のお題は、がん哲カフェメンバーそれぞれの活動について近況報告を中心に、時事問題を絡めて議論を展開した。

江川さん
他に王子がん哲カフェを主宰しているが、この会は老老介護をしている人が多く、そのために会に参加できない人がほとんどなのが実情。全国津々浦々、様々ながん哲カフェが存在しており、自身もいくつか顔をだしているが、それぞれに個性があり良いことだと思っている。「がん哲」自体は現在、過渡期にあるように感じているのは確か。
がん患者のための患者会というものも存在しているが、患者会とがん哲のスタンスの違いがあることによって、「気づき」が生まれると思っている。

桑島(本コラム筆者)
健康を自負していた夫ががん患者となったため、台東区内にあるがん哲カフェに救いを求めて参加し、現在に。じき丸2年が経過するが、居場所をみつけたという実感があり感謝している。特別な活動はしていないが、このがん哲カフェのために仕事上のスキルが役立てばうれしい。現在は、カフェ議事録(コラム)やイベント取材など広報的役割を担っている。
夫が症例数が多いとはいえない稀少がん患者のため、今年2回、患者会に参加してきたが、貴重な情報が得られるだけでなく、参加されている患者さんたちのパワーをもらえ参考になった。がん哲カフェとは会のあり方やスタンスは違うが、それはそれでいいと思う。今後も上手に活用(参加)していくつもり。

大村さん(仕事で少し遅れて参加のため、活動報告はなし)
(江川さんが精力的に活動されている)「子宮頸がんワクチン被害者の会」について話が及ぶと、「被害者が多くでた背景として、今、ワクチンをうっておかないと損するとか大変なことになるといった風潮があったことは否めない。現在、自分の娘が年頃のため、ワクチンを打つべきかどうか思案中。そうこうしているうちに娘が成長していくのを感じ、同時に不安をも覚えている」とのこと。

木村さん
特養で看護師として勤務。現在はがん患者さんとはあまり関わっていないが、亡くなっていく患者さんをどのように看るかは、常に考えている。

 

 このがん哲カフェ主宰者の宮原さんは、薬剤師だけでなく地域医療など様々な活動に取り組んでいるため、問題意識が多い。当日の報告は次の通りだった。

●医療従事者であるので、できるだけ多くの方たちを看たいと思っているが、特に台東区民としてがん患者さんと関わりたいと思いがん哲学カフェを主宰している。最近は悲しいことに、仲間だったケアマネが生命を落とした。この辛い出来事を通して思ったのは、介護保険の認定がおりる前に患者さんが亡くなるというケースが多くあり、それがずっと続いているという嘆かわしい事実が存在すること。何のためにケアマネが存在しているのか? ケアマネのあり方が問われているのではないだろうか?

●現在看ている患者さん(闘病歴9年)は、40代男性、妻子持ち。若いだけになんとかしてあげたいと思うが……。何かを残してあげたいと思いICレコーダーを貸している。できれば聞き書きをしてあげたいと思っているが、聞き書きに終活のイメージを持っている方が多く切り出すのが難しい。聞き書きをしたり、自身で日記を書くように思いを書き綴ったり、それが面倒ならば自身でレコーダーにありのままの思いをのべたり。思うだけではなく表現するだけでもいろいろな気づきがあり、楽しみに変えられるはずなので、何らかの形で進めていきたいと思っている。

●東京医大をはじめとする不正入試問題が取りざたされているが、こういう現状は今に始まったことではない。不正は悪いことであるが、不正が行われている背景を理解する必要はある。何のために医者になるのか、もう少し問うてほしい。国民全体が望む医師の在り方とは? 医者にコミュニケーション力は求められない(必要ない)という意見があるが、であるならばAIの方が人間の医者より優れていて、医者の存在意義はないのではないか? 
対話力のない医者にこそ、がん哲学外来の精神を学んでほしいと思う。がん哲の強みは、言葉の力、そして人間としての存在について問い続けることである。

●現在、関わっている特養の医療体制に問題があると思っている。昔ほど入居が難しいとはいえなくなっているものの、ベッドが空いていてもそこで働く医療スタッフが揃わないので患者さんを受け入れられない現状がある。
医療スタッフの働き方についていえば、多くの若者が人材派遣会社に登録していて、そこから派遣されてくる。
入居者の家族については、任せっきりで全然面会にこない人もいれば、毎日面会にくる人もいる。毎日くるのであれば、自身で面倒みればいいのにと思わなくもない。

 

 長く続けていくといろいろな問題が生じてくる……。 来月(12/15)は、恒例の「勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来シンポジウム」を開催する。

【2018/11/19 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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