2021年(令和3年)12月3日、毎年1回師走に開催される恒例の「勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来シンポジウム」(主催/勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来:共催/浅草かんわネット研究会)」が、コロナ禍の中、ハイブリッド開催(リアル・オンライン共)となりました。場所はいつものように浅草三業会館、ハイブリッド開催とはいえ、従来のリアル開催時よりも会場に集まる人数を制限して行いました。いうまでもなく、一時は収束の兆しがみえた感染拡大でしたが、またしても新種の変異株がインフルエンザと共に流行しだしたからです。2020年冬にはじまったコロナ禍、3度目の冬となり出口が見えそうでみえないもどかしさがあります……。
それでも日本から遠く離れた地で開催されているワールドカップサッカー(W杯)で日本チームが善戦、強豪国に勝利するという朗報をもたらしてくれたおかげで、日本列島は歓喜にわき暗いニュースを吹き飛ばすような熱気に溢れました。その証拠に、当日の会場では、前日、日本チームが優勝候補のスペインを倒した話題でもちきりでした。私も眠い目をこすりながらテレビ観戦し感動の時間を持ちました。
話を戻して、この日のシンポテーマは引き続き、「生きるということを語り合う この3年そしてこれから 言葉の処方箋で紡ぐ2022」。当日のプログラムは次の通りです。
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〇音楽の時間(勝海舟記念下町浅草がん哲学外来テーマ曲 「ほっとけ」他/わをん)
〇講和「勝海舟からの学び そしてがん哲学言葉の処方箋(歴史は繰り返す、歴史は人を創る、歴史は哲学)」
江川守利氏(勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来メンバー、 渋沢栄一記念王子がん哲学外来主宰) 宮原富士子氏(勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来主宰)
〇講和「山谷の人たちの暮らしは今」
吐師秀典氏(NPO法人友愛会理事長)
〇講和「つなぐ・むすぶ・つたえる」
安達昌子氏(医療法人社団律昌会さくら醫院院長)
〇講和「生きるということ」
廣橋猛氏 (浅草かんわネット研究会理事長・永寿総合病院緩和ケア医)
〇講和「樋野興夫先生からのメッセージ」
樋野興夫氏(一般社団法人がん哲学外来名誉理事長、順天堂大学名誉教授)
〇音楽の時間(年の瀬の祈りの歌)
村島悠華氏、藤吉歌音氏
○クロージングトーク(がん哲学外来のビジョンについて)
宗本義則氏(一般社団法人がん哲学外来理事長、福井県済生会病院副院長)
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樋野興夫先生によると、2022年9月1日時点、百歳以上の日本人は9万526人で、そのうち女性が89%だそうです。長寿国となった日本は人生百年時代といわれていますが、それでもがんで短い人生を終える方々は少なくありません。
当日は、レモネードで小児がん患者およびその家族を支援する活動を展開する「レモネードスタンド普及協会」からスタッフの方々が参加。16歳の若さで脳腫瘍のためにこの世を去った天才作曲家・加藤旭さんのことを紹介され、1歳から14歳までの子どもの病気の死因第一位である小児がん撲滅への熱意を語りました。
※「十六歳のモーツァルト 天才作曲家・加藤旭が遺したもの」
小倉孝保/著、2021年5月21日/刊、2200円(税別)、KADOKAWA/発行
シンポジウムが終わり、この原稿を書いているのは12月9日。一次リーグ突破が危ぶまれた日本チームは首位通過をはたし、日本国民を喜ばせたばかりか、粘り強さ、団結力、サポーターをふくめた礼儀正しさなどが世界中の人々から絶賛されました。
ご存じの通り、念願のベスト8入りをめざして格上のクロアチアチームと死闘を展開し、PK戦の末に敗れてしまいました。若い選手たちが多く集まった今回の大会では、彼らが実にのびのびと躍動し、ボールを繋ぎゴールをめざす雄姿が感動的でしたよね。そして彼らを導くベテラン選手たちの温かさ、ひたむきな姿が印象的でした。みな、新しい景色をみるという思いを共有しているからですが、想いがしっかりつながったすばらしいチームだったのではないでしょうか。
選手たちを率いた森保監督も「新しい景色をみることはできなかったが、選手たちが新しい時代をみせてくれた」とコメントしています。敗れて涙した選手たちは、きっと4年後、悔しさをバネにして再び感動を与えてくれることでしょう。
がん哲学外来の精神を伝える浅草にゆかりのある仲間たちが一年に一回あつまり集うこのシンポジウムも、同じ思いを共有することで繋がり、“生きる”を支えあう仲間たちで成り立っています。そして、来年夏(7月23日)には、「がん哲学外来市民学会第11回大会」が浅草で開催され、勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来主宰の宮原富士子さんが大会長を務めます。福井からかけつけてくださった宗本義則先生は、「浅草のがん哲カフェのパワーはすごいと実感している」と語りました。
今回が13回目を迎えるこのシンポジウム、私にとっては今回が6回目の参加となります。6年の間に、大事な家族をがんで亡くしたり親しい友人を病気で失ったり、当然ですが加齢現象があちこちに出てきました。
この世のことは何ひとつ不変なものはなく、時間は確かに前へ前へと進んでいることを実感します。死別の機会が増えるにつれ、生きることを誰かと語りたいという思いが強くなり、<新しい景色>を見たいという気持ちが強くなっているような気がします。 前へ、前へ!
※がん哲学外来市民学会 https://shimingakkai.org/
【2022/12/12 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)