勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

もしも自分が、がん患者としてクルーズ船に乗っていたら!?
日本では何故、血圧の治療がうまくいかないのか!?

 新型コロナウイルスの国内感染者の数が日ごとに増加する中、2月度の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」と表記)が、2月17日に開催されました。がん哲カフェ史上、初めて(?)2つのお題目となりました。

 ひとつ目は、現在、世界のトップニュースとなっている新型コロナウイルスに絡むもので、「もしも自分が、がん患者としてクルーズ船に乗っていたら」。発祥地は中国なのに、このクルーズ船の乗客のひとりから感染が確認され、もたもた対応していたために、いつしか集団感染となり、世界から日本入国すると危険だと認識されてしまった失態。この状態に、2011年の「3.11」を思い出した方は少なくないでしょう。しかも、感染された方の死亡が確認され、日本政府の対応に非難が集まりました。

 日毎感染者が増える中での開催、お題として取り上げたのは、不運にもクルーズ船に閉じ込められ感染し不自由な日々を余儀なくされた人々の立場になって考えてみようということになりました。もし自分が、がん患者としてあの船の中で拘束され、飲まなければならない抗がん剤などの薬がなく困った状況になったら……。

 2人に1人ががんに罹患する現在、もしかしてこのクルーズ船にもがん闘病中の方がいたかもしれません。とにかく、想定外の拘束でしたので、日常的に服薬している薬がなく困っているという乗船者の声がSNSなどを通して取り上げられました。

 浅草がん哲カフェの主宰者である宮原富士子さんの本業は薬剤師で、日頃、「かかりつけ薬剤師」を持つことの必要性を、声を大にして説いておりましたが、この出来事を通して、宮原さんの主張がいかに重要であるかが示されたのではないでしょうか。

 もう一つの議題は、「血圧の治療」。血圧の治療が何故、日本でうまくいっていないのかについて考えました。

 医療・介護従事者は多忙な仕事の合間に、勉強会や研修会などに足を運び、日々、研鑽をつんでいます。私は業界人ではありませんが、主宰者側スタッフとして様々な会合に参加して記録をとっているので知っています。その中で、「高血圧の治療」については幾度となく各地で講演や勉強会が開催されておりますが、残念なことに治療率も治療継続率も非常に低いという現実があります。それでも、中高齢者になると、必ず服薬している薬のひとつが、血圧を下げる薬です。血圧の異常がなくても、昔から飲んでいるのでそのまま飲み続けている方も珍しくないそうです。

 血圧を管理する方法は、患者自身が薬を使って自身でも血圧計でモニターができるというとても簡単なものです。ちょうど体重計にのって健康管理をするのと同じように。しかし、いつもより体重が3キロも増えていると、急ぎ食生活を改善する方が大半だと思いますが、血圧管理はそうではないようです。そもそも、体重計にのるように、毎日自身の血圧を計測している方はどれほどいるでしょうか?

 簡単すぎるために、医師の指示も曖昧という現実。“たかが血圧”などと思わず、患者自身が明確な目標値をもって血圧と付き合うことが大事で、薬さえ飲めば大丈夫という安易な考え方はなくしたいものです。

 この日は、がん患者の家族の方が初参加されました。抗がん剤治療がはじまったばかりなので、薬の扱い方や風邪、インフルエンザ、コロナウイルスなどの流行する現在はとても神経質になっておられました。初めての家族のがん闘病で、病気のことや過ごし方など心配なことばかり。体験者の話をもとに皆で話し合いました。

 抗がん剤を使用している時は副作用として血圧の管理がとても重要になってきます。通院しない日は、自宅で服薬し、自身で血圧を計測し体調を管理します。 「もしも~」は唐突にやってくる! 食料を備蓄するように、日頃から緊急時の健康管理対策を万全にしておきたいですね。

【2020/2/17 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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