勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

基本に戻って考える時間

 師走にはいると長年の習慣で「あれもこれもやらなければならない云々」という思いで落ち着かない気分が続きますが、考えてみると年賀状や寒中見舞いといったご挨拶を仕舞いにすることにしたし、忘年会はいっさい参加しないことにしたので、それにかかる時間と労力がかからないのだとわかり少しホッとしております。
  ……と一息ついていたところ、ラジオで、年末は「人間関係リセット症候群」が増える傾向がある云々と伝えていましたが、そもそも必要以上にSNSで繋がる必要はないはずですから、ブロックされたり削除されたりしたからといって負の感情をもつのは不自然のような気がします。リセットする側に問題がある(?)ような解釈はしっくりこないのではないでしょうか。自身の状況が毎年変化するのに、いつまでも同じ事柄を続けるのは無理というものですよね。不要なゴミを捨てるように無駄な人づきあいやストレスとなっている事柄を整理したり離れたりすることは大事です。

 ここのところニュースでは、不祥事の続く日大問題に対して、作家で日本大学理事長の林真理子さんの会見模様がずっと流れていて、改革途中ではあるものの<新生日大>に向けて動き出そうという意思が感じられるような気がしました。また、いつしか深刻化してしまったホスト業界の売掛金をめぐる問題を改善するために行政とホスト代表者会議の話し合いの模様が流れていたのも印象的でした。
  変化といえば、大リーグで活躍中の大谷選手の移籍先はどこになるか、世界中の人々が注目していますよね。この原稿を書いている(12/8)時点、まだ決定していないようですが、どこに行ってもこの選手はアスリートとしての初心を忘れないで結果をだしてくれるでしょう。
  忙しい師走という時期は、一年のしめくくり。やり残したことをやるだけでなく、来る年が良き方向へ動くように変わっていくための助走の時期でもあります。

 12月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン 哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、12月4日夜に開催されました。 今月のがん哲カフェは、「がん哲カフェを立ち上げる時の心得 ~様々な形・予想できるお困りごとと解決方法~」について、がん哲学外来理事で医師の東英子先生が話されました。
  浅草のがん哲カフェの常連メンバーのうち主宰者の宮原富士子さん、「大阪がん哲学外来 メディカルカフェあずまや」主宰者の東先生、東京で複数個所がん哲カフェを主宰する江川さんは、活動の中心となる「一般社団法人がん哲学外来」の理事を務めております。運営に関わることから、全国津々浦々で新規にがん哲カフェを立ち上げようとする方々にむけて、これまでも幾度か運営者向けの講座を行ってきました。今回は、再度、基本に戻ってがん哲カフェの在り方を考える時間をもちました。

※2023年1月がん哲カフェコラム 
http://www.asakusakanwa.net/g-cafe/20230123.html

この日、全国からオンライン参加した方は全部で28名。これからがん哲カフェを地元で立ち上げようと考えている人、既に開設している人、特に開設する予定はない人など様々でした。
  複数人が集まると、参加者の中には、自分のことばかり話す/話す時間が長い/愚痴が多い/がんや治療のことなど他者の現状を詮索したがる/他者の意見を否定する/といった行動がみられることがありますので、初参加者に向けてカフェが設けたグランドルールをきちんと説明して進めることが大事です。
  カフェを開設している方々に現状をお伺いすると、全体的に参加者がそれなりにいて、リピート率も高く、和気藹々とした雰囲気を維持しているとのことで、幸いにも<困りごと>といったことは現時点ないようでした。

 ところで、がんで悩んでいる方々のためにボランティアで開いているのがん哲カフェは、参加者が多く、それぞれが参加することでホッと安心し癒されて現実に戻っていくようになるのが理想の形だと思いますが、運営する側になるとつい一生懸命になってしまいカフェに人が集まらないのは何か問題があると考える傾向があります。
  がん哲カフェに来る方々はがん絡みの悩みをもった方々で、カフェは彼等の心が軽くなるように気づきと癒しを与える場です。総じて、不安や悩みをもった方々ばかりが集う場であり、暇つぶしにきている方は皆無です。自分で解決できていればカフェの存在価値はありませんし、それはとてもいい状態だといえます。
  つまり、自分が運営するがん哲カフェがあまりはやらなくても(参加者がいなくても)焦る必要はないし、運営の手法が間違っているわけではないということを忘れてはならないでしょう。

 一年の終わりとなると、今年読まれた本、流行った言葉・楽曲、時の人などが選出されます。それを知って、あ~そんなこともあった一年だったなぁ~と感じてしまいますよね。私の場合、脳科学者の中野信子さんの著書「科学がつきとめた 運のいい人」(サンマーク出版)がずっと気になっています。「強運は行動の結果です!」という惹句があり、さらに著者は、「人のための行動が脳を刺激する。何重もの快感が頭と体に巡る!」と説明しています。実はまだ読んでいないのですが、本当にその通りだと納得しています。
  他者のためになることを率先してやることは良い行いですが、熱中するあまり、自分の価値観を押し付けたり、思うようにならないからといってくよくよしたりしないことが重要と言えるでしょう。どんな場面・どんな場所にも心得は必要で、行動する場合は匙加減が不可欠ということですよね。

 

【2023/12/4 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

アーカイヴ