勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

その名にちなんで

 日が短くなり秋の気配を感じつつも、なかなか消えてくれない夏の暑さ、熱気、匂い……今年もまた昨年以上の酷暑となり「7月、8月は観測史上最高の暑さ」を記録、9月後半、5日間ほどエアコンなしで過ごすことができましたが、また真夏日がやってきて「観測史上初・・・」云々という言葉が飛び交いました。
「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざがありますが、秋のお彼岸前に都内にあるお墓の掃除をしにいった日は、眩暈がしそうな暑さでした。暑さと比例してコロナ、インフルエンザが同時に再流行し、これまでがんばってきた方々が遂に陥落、感染の憂き目にあったケースを多数耳にしました。

 そして、ガマンにガマンを重ねて10月となり、少し前までの季節とは明らかに違う肌寒い風の感触、匂い、からりとした空気……これらをどれほど待ち望んだことでしょう。あの狂ったかのような異常な暑さの日々が存在したのかと思うほどに穏やかな日々、すがすがしい空気に包まれてなにやら懐かしい気分になります。
  10月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、10月2日夜に開催されました。
  待望の秋の到来と同時に、海の向こうで奮闘しているメジャーリーグの大谷翔平選手が日本人初のホームラン王に輝くという快挙をなしとげる報道に日本列島が歓喜に包まれました。本当にスゴ~~~イ、オオタニさんですよね!

 今月のがん哲カフェは、自由発言の時間とし、全国津々浦々に存在する「がん哲カフェの名前はどうあるべきか?」についてをメインに考えるフリー討論の時間となりました。
  新渡戸稲造記念がん哲学外来メディカ・カフェ(岩手県)、水戸黄門記念がん哲学外来まちなかカフェ(茨木県水戸市)、新島襄記念がん哲学外来なごみカフェ(群馬県伊勢崎市)、勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来(東京都台東区)、吉田松陰記念北千住がん哲学外来(東京都足立区)、福井県済生会病院メディカルカフェ(浅井三姉妹記念がん哲学外来)、シャチホコ記念がん哲学外来メディカルカフェ(愛知県名古屋市)、 がん哲学カフェいつくしま(広島県廿日市)等々、全国のがん哲カフェはその土地の特徴をいかした名前をつけて存在をアピールしています。
  「がん哲学外来」という言葉をつけると敷居が高いと感じる方々が多いはずなので「つけなくてもいいのでは?」という意見がでた一方で、活動する団体の目的が明確にされていた方が訪れる方々に信頼と安心を与えるので「がん哲学外来をつけるのは必要」という意見もでました。
  主宰者の宮原富士子さんがこの問題を選んだ理由は、言うまでもなく連日報道されているジャニーズ問題の影響があります。体制が変わると発表した後、同事務所は、今後性加害者の名前を継続使用するのかどうかが注目されてきましたが、同日夕方のニュースで、今後いっさい性加害者の名前をなくすと発表したからです。
  繰り返されるこの問題に食傷気味になっている方もいらっしゃるでしょうが、長年にわたり放置されてきた問題ですから、決着をつける意味でも徹底的に検証していくことは大事なのかもしれません。

 起業したばかりの会社の場合、社名の由来について聞かれる機会は多いと思います。私の女友達の中にも起業してがんばっている人が数人いますが、社名選びにかなりの時間をかけた人もいれば、面倒だからと自分の名前をそのままつけ「有限会社〇〇〇〇事務所」とした人もいます。
  台東区内にあちこち存在するドラッグストア「マツキヨ」は、創業者のフルネーム(松本清氏)から名付けられました。優良企業の社名の由来をしらべると「なるほどね~!」と感心するものが多々ありますよね。
  先日、親しい友人の母校の同窓会「〇〇会」のHPをみようと思いネットで検索しましたところ、病院、大学のコーラス部、なんだかよくわからない会など似たような会の名前がずらりとでてきました。幸いにもそれなりに手を入れているHPなので迷いませんでしたが、よくわからない人は焦ってしまう可能性はあると思いました。 名前はもちろん大事ですが、どういう活動をしている団体かということを明らかにすべきなのは大事だと改めて感じました。

 余談ですがこのコラムを書いていて、新しい生命に対する命名といえば、昔よんだジュンパ・ラヒリの「その名にちなんで」という小説のこと、読了後しみじみとした心地よさを感じたこと、感想を話し合った人との思いでなどを、ふと思い出しました。まだ読んだことのない方は「読書の秋」にふさわしい名作ですので、是非よまれてみてはいかがでしょうか。名前に託された深い思いが静かに心に届くことでしょう。

※参考:一般社団法人がん哲学外来 http://gantetsugaku.org/learning/

 

【2023/8/7 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

アーカイヴ