勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

がん患者を抱える家族の理想の在り方 および支援の在り方とは?

 4年に一度のサッカーワールドカップが始まり、日本チームの善戦を期待するムードで沸いている最中、6月18日午前、大阪北部で最大震度6弱を記録する地震が発生した。その前日にも日本各地で見過ごせない地震が多発していただけに、不安を覚えた人は少なくない。

 大阪を地震が襲った日の夜、2018年6月の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」と表記)が開催された。

 この日のテーマは、「がん患者を抱える家族の理想の在り方、および介護支援の在り方について」。がん哲カフェの課題は、コアメンバーが介護や医療の現場で感じる問題について取り上げたり、参加者のリクエストを取り入れたりして運営している。

 がん患者に限らず家族に病人がいる場合、病人中心の生活となるため、ある意味、家族の自由は制限されるし、病人が快適に過ごせるための工夫が必要とされる。常に病気や死の気配や匂いといったものが漂っているだけに、闘病している家族を勇気づけ元気になってもらうために、介護する側のメンタル面での配慮も欠かせない。

 核家族化が進んでいる現状、家族に病人を抱えている場合、一般的には人数が多いほど人手があり役割を分担することが可能だが、そうでない場合、一人で家計も介護も担わねばならず負担が大きい。その結果、生きていくことに疲れ心中事件など悲惨な事件が起きている。

 そういった不幸な事件を防止するためにも、国や自治体が懸命に一人で介護を抱え込まないような啓蒙活動を行っているが、現状はどうだろうか? 当会はがん哲なので、がん患者に限定して考えてみた。

 がん患者を介護する場合、医療機関や介護サービスを利用しようとする場合、まず、介護のキーパーソンは誰なのかを確認される。これは、業務上連絡を円滑に行うためのものだ。しかしながら、医療や介護サービス上のキーパーソンと、家族および親戚間のキーパーソンが同じとは限らない。

 たとえば、夫ががん患者となった妻のA子さんがキーパーソンとなり、一人娘と2人で介護に励んでいるケース。この家は、夫の親戚が介護や治療をめぐってあれこれA子さんに口出しをしてくるなど治療法を決定する権利が薄い。介護の援助を申し出てくれる場合はよいとして、援助などする意志はないのに、口出しだけというケースは正直迷惑で、A子さん側にすればストレスを感じるものである。

 子どもいないB子さんのケースは、夫ががん患者になったと親戚に報告した途端、本人が亡くなった後の相続の話に終始して嫌な思いをしたという。

 大家族のC子さんは、障害児をずっと育てていたところへ、同居している義父と義母ががん患者となり介護中。一家の大黒柱の夫は家事も介護も妻まかせ。障害児の他の3人の子どもたちのうち女子だけは協力的だが、2人の男子は戦力外。かなり、タイトな介護人生だ。

 がん患者を抱える家族は確かにストレスフルだ。それゆえに、患者本人だけでなくその家族も一緒にカウンセリングを受けてリフレッシュする人たちも少なくない。闘病や介護が長くなると、人の心は疲弊するものである。

 現在はおひとり様社会といわれ、ひとりで闘病し、生活の糧を稼ぐために働いている人たちも少なくない。さらに、老親の介護を抱えた人もいる。行政の支援をうまく活用し、すこしでも負担が軽くなることを期待したい。そして、闘病していくことや愛する人の介護に不安を覚えた時、がん哲の存在を知って欲しいと願うばかりである。

【2018/6/18 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

アーカイヴ