勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

雲の上はいつも晴れ

 7月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、7月3日夜に開催されました。首都圏はまだ梅雨明けしていないのに既に真夏のような酷暑が続いています。猛暑だけでなく、7月は台風や大雨シーズン、日本列島のあちこちで線状降水帯が発生し穏やかではありません。
 7月の台東区は、七夕まつり、浅草寺のほおずき市、墨田川花火大会などがありますので相当な混雑が予想され、いっそう暑くなりそうです。夏が苦手な私ですが、7月はお盆シーズンのため準備があり、数年前から7/13~7/16は全休状態にしております。

 さて、7月のがん哲カフェは、京都でケアマネージャー(以後、「ケアマネ」と表記)として働く川﨑まさみさんが登場され「仏教のおはなし」をテーマに話されました。川崎さんは京都の介護施設のケアマネだけでなく僧侶でもあります。仕事柄介護支援者と多く接しているうちに、臨床宗教師の必要性を感じ、元々仏教関連施設に勤務されていることもあり、僧侶にもなることを決心したそうです。仕事をしていると必要な資格取得が必須となるものですが、ケアマネにしても僧侶にしても簡単になれる職業ではないことは言うまでもありません。国家資格を取得するためには相当な時間と勉強が必要ですし、僧侶という職業は宗教家だけに厳しい戒律と勉学を積まなければなりません。それでも必要と思うから「自分が僧侶になって人のためになる」とアクションをおこす。すばらしい行動力ですよね!

 末期がんや難治性の病気を患うと、どんなに気丈な方でも死が身近に感じられるものです。闘病中の多くの患者さんは、病気に打ち勝つ意欲を持ち続け厳しい闘病生活を送られますが、どうしても解決できない問題は多々あります。時に絶望してどうでもよくなったり、家族や大事な人にあたったり、自ら生命を絶つ道を選んだり……。
  どうしたら迷いや不安といった問題を解決できるのでしょうか? 少しでも心を軽くする方法として、人は心の拠り所となる対象を探し求めます。その一つに宗教があり、それは病気に苦しむ人だけでなく、古今東西かわりない人類が生きていく営みの一つです。

 川崎さんの勤務先の母体であるあそかビハーラ病院では、臨床宗教師・ビハーラ僧が常駐し患者さんに寄り添い、主にスピリチュアルな痛みに対するケアを行っています。

※あそかビハーラ病院 http://www.asokavihara.jp/index.html

 この日のがん哲カフェ参加者は、オンラインの特性をいかして、首都圏のみならず、栃木、山梨、函館、広島、大分など様々でした。参加者の職業は、私以外は医療従事者(薬剤師)でした。薬剤師は、(多くが)医師の処方箋にもとづいて患者さんに薬をだしますが、仏教にも「応病与薬」という言葉があり、お釈迦様は医師が病人に薬を与えるように人の悩みに応じて教えを説かれたといいます。
  日本人の死因首位をしめるがんは、恐ろしい病気のように思われていますが、仏教ではがんより怖い病気は、「心の三毒」(貪り/怒り/愚痴)と考えられています。煩悩に打ち勝つためには、心のうちを見つめ直すことなのは言うまでもありません。

 余談ですが、今夏7月23日、第11回がん哲学外来市民学会が浅草で開催され、浅草のがん哲カフェ主宰者の宮原富士子さんは大会長のため、現在準備で忙しくされております。この大会の前日(7/22)、雷5656会館を会場にして映画会が上映されます。 上映作品は、「明日香に生きる」(溝渕雅幸監督)で、13時と17時の二部構成で、上映会の後にトークセッションを予定、このトークセッションに、僧侶で公認心理師の佐々木慈瞳(ささき じとう)さんが登場されます。2020年3月まで奈良の音羽山観音寺の副住職を務められた佐々木さんは、奈良県総合医療センター緩和ケアチーム公認心理師、西奈良中央病院緩和ケア病棟スタッフ、さらに奈良県教育委員会スクールカウンセラーでもあります。

 この原稿を書いているのは7月7日、七夕の日。子どもの頃、町内会の行事に参加して、たわいのない願い事をたくさん書いて笹飾りとしてつるしたものです。引き離された織姫と彦星が天の川を隔てて一年に一度会えると思うと、切なくロマンチックな気持ちになったものです。
  7月といえば(地域によって異なりますが)お盆ですよね。すっかり日本人の日常に深く入り込んでいる仏教の慣習の一つであるお盆……。私の場合、子どもの頃はお盆とは無縁の生活をしておりましたが、いつの頃からか7月にお盆を迎えるようになり、この時期がくるとしゃんとしなければという思いと、逝ってしまった大切な人が里帰りするというワクワクした気持ちになります。
  昼間は蒸し暑さのためにだるくてすっきりしませんでしたが、いいお話しをきき身体の中を涼風がめぐったような夏の夜のひと時でした。心を整えると、身体はすぐに反応してくれますよね。マインドリセット、必要ですね!

【2023/7/10 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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