勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

悲しみを受け止め、寄り添い生きてゆく

 「逃げる月」とはよく言ったもので、2月は他の月と比べて短いこともありますが、一年の中で特にあっという間に過ぎていく月だと感じます。豆まきをしたかと思うと、今度はチョコレートを買わないといけないような雰囲気になり、前の月よりも寒さが緩んできたかと思うと花粉症対策をしなければなりません。電気代高騰のため節電を心がけつつ今月の電気代は幾らなのかが気になり、確定申告をすませないと落ち着かないし、世の中的に年度末がちかづいているため大忙し……。私のような自営業者はカレンダーに「納品日」をつけるのがなくなると困るので、「忙しいうちが花」と思い老体に鞭をうってやるべきことをやるのみです。
 残念だったのは、上野動物園のパンダ、シャンシャンが中国に返還されるまでに必ず対面したい!と思っていたのに果たせなかったことです。2017年6月に誕生して以来、こんなに近くにいるのに会うことが叶わず本当に残念でたまりません。
 2月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、21日に中国へ向けて旅立つシャンシャンとの別れを惜しむ話題で盛り上がりをみせていた2月20日に開催されました。
  この日は昨年後半から実施している、「がん哲学外来」にいろいろな形で参加したいと希望する方向けの「がん哲学」基本のキを学ぶ講座で、引き続き「大阪がん哲学外来 メディカルカフェあずまや」主宰者の東英子医師が講師として参加し、「グリーフケア」について話されました。

  喪失体験に伴って生じる反応(=グリーフ反応)は様々なプロセスを経て、やがて落ち着きを取り戻していきますが、大事な人を失った心の傷は時間が悲しみを和らげることはできても、何年たっても消えてなくなるものではありません。この悲嘆のプロセス(グリーフワーク)は特別な人にのみ起こる反応ではなく、全ての人に共通するもの、つまり正常な反応といえます。
  「正常な反応」なのですから、悲嘆のプロセスを自然に受け入れ嵐のような感情がおさまるのを待てばいいわけですが、悲しいことに私達が生活する場では、お節介や悪意ある人たちが余計な言葉や行動で喪失感に苛まれている方々を傷つけてしまうことが多々あるようです。
  伴侶を失って悲しみのあまり親戚に相談したら、「いつまでも故人を思い出して泣いていると仏さんが成仏できない」と言われた女性は、思い出すことも泣くことも「良くないこと」と思い悲しみに蓋をしてしまい、結果としてかなりしんどい思いをしたといいます。
  「〇〇さんの分までがんばって生きて、幸福になってほしい」と言われた女性は、これ以上、何をがんばればいいのか途方にくれたといいます。
  自分が死んでしまったのに誰も泣いてくれない、思い出してもくれないとしたら、亡くなった人は寂しい思いをするはずです。悲しみにとらわれてしまうのは良いことではありませんが、亡き人と共に生きた日々をたくさん思い出し、感謝の気持ちをもって語りかけ忘れないことが一番の供養ではないでしょうか。

 私自身も(これまでいくつかのコラムで書いたことがありますが)最愛の家族をなくした後、深い喪失感を味わい、それは苦しい闘病生活を上回る経験だったと思っています。
  経験者だからこそ同じような体験をされた方の手助けをしたいと思うものの、先述したような「有害支援」をしてしまった(?)ことに気づき落ち込んだこともあります。「よい聴き手になる」「ただ傍にいる」「誠実な関心を示す」といった「有用な支援」をしてきたかどうかは疑問です。
  それほど、心の問題は難しく一筋縄ではいかないものだと実感しています。だからこそ、近くにグリーフケアを必要とする人がいたら、「悲嘆の表現として現れる感情や行動などを正常なものとして共に受け入れ寄り添う」心構えをもってほしいと思っています。
  がん哲カフェに足を運ぶ方々(当事者やその家族など)は、死の近くにいる人たちといっても過言ではありません。そのことを意識して関わってほしいと切に願います。

  先日、近くのスーパーに買い物にいきましたら、偶然その日は特売日で、大好物のデコポンと甘平(カンペイ)が一個98円だったので嬉しくて買い込んでしまいました。少し前までは一個198円だったのにです。もちろん、戦利品(?)は仏壇にお供えしました。多くのものが値上がりしている中で、こういう特売品に恵まれる幸運。こんなささやかな幸運が舞い込んでくる日常が、ただ嬉しい……。大切な人やものを失って途方にくれている方々が落ち着きを取り戻し、ざわざわした心が穏やかになりますように。

 

※一般社団法人がん哲学外来 http://gantetsugaku.org/

【2023/2/20 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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