勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

ギスギス感を救えるもの、それは……

 「ここのところ、台風や大雨の害が日本列島をおそい、天候不安定な日が続き体調管理の大変さを痛感している。」と、先月の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」と表記)の議事録風コラムで書いたが、今月のコラムでも同じことを書かなければならないという事実に愕然としている。

 10月度のがん哲カフェは、10月21日に開催。9月の大型台風に続き、10月12~13日(関東地方は13日に直撃)に台風19号というスーパー台風が上陸し、同時多発的に各地の川が氾濫し甚大な被害となった。このスーパー台風で、ようやく今年の台風は終わりかと思ったらまだ続き、10月25日には台風21号の影響で、千葉県と福島県の一部が記録的な大雨を記録した。続く災害に幾度も被災された方がいるという過酷な現実に、私たちは何ができるのだろうか?

 この原稿を書いているのは11月初旬。このような自然災害が続くと、政府の対応に不満をもつ人が次第に増加し閉塞感が蔓延するものである。世の中がギスギスするから自然にも影響するのか。その逆なのか? ともあれ、天変地異が繰り返され人々の幸福度が低くなると、極端な思想を持つ人物や独裁者がもちあげられることは歴史が証明している。

 江戸後期、九州の大洪水に端を発しておきた大塩平八郎という大阪の与力が陣頭指揮をとった「大塩平八郎の乱」は、相次ぐ天災で人々が疲弊した結果うまれた市民による一揆として有名。この一揆は全国に波及していったのだから、現在でいう一警官がおこしたこの反乱はかなりの影響力を与えたのではないだろうか。

 ところで、がんが治る人と治らない人の差は何なのだろうか? 

 ストレスを感じるか感じないか。つまり、ギスギスしないことががん患者(がん以外の病気も)には大事だ。では、がんにならないようにするためにも、早く治すためにもギスギスしないことが最優先課題ということになる。

 ということで、10月度の題目は「ギスギス感について」。

 家庭・職場・近所・人間関係……どーでもいい事が問題となったり、余裕がなくギスギスが蔓延したり、誰もが感じているのではないだろうか。働き方改革が推奨されているが、働く人は働くし、働かない人は働かない。仕事があり、家庭があり、子どもを育てることは嬉しいが、時間はみな限られていて、不満はつきず、酒でも飲まないとやってられないと思っている人は少なくない。

 自然災害についていえば、地球温暖化対策ができなければ、毎年大型台風がきて甚大な被害がでることが予想される。復興費用は捻出できるのか? 被害をうけた人は立ち直れるのか?

 その他、ギスギスしていると思う事柄についてあがった意見は次の通りだった。

○これだけすごい被害をもたらした台風なのに、中継の際、原発の事情をいっさい報道しなかったことに違和感を憶える。現政権に忖度するマスコミの現状は嘆かわしい。

○結婚相手を探すのにマッチングサイトを利用する人が多いが、マッチングして伴侶をみつける寂しさを覚えるのは確か。恋愛のすばらしさや過程を経験しないのは残念に思う。人が人を思うゆえんが大事。

○人の哲学が足らない。AIにたよると人と会話をしなくなり、それはそれで心配。他者と話す時に目をみようともしないし。人の生き方は、人との会話や繋がりで育まれていくもの。医療の現場では、医師は、馬からおりて患者の目線(思考)でみないとだめ。

○暗闇にロープをはって通行人やバイクにのった人に危害を加えたり、どこかで憂さ晴らしをしたり、他者を平然と傷つける人たちが横行する世の中。山本太郎議員が支持されるのは、わかりやすい説明をしているから。テレビによくでる池上彰さんもしかり。

○兵庫県の学校教諭間のイジメ問題、すさんでいて恐ろしい。教育の現場でこんなことが行われていることの不思議さに鳥肌が立つ。

○嫌いなもの嫌なものを排除する世の中になっている。偉人の事例や思考にならって考えていかなければいけないと思う。

○「川田龍平」さんの名前をあげても、知らない学生が多いことに驚く。死ぬかもしれないという経験を是非、今度のがん哲シンポ(12/14)で話してほしい。

 10月中旬にスタートした人気テレビ番組「ドクターX」では、よくAIとバイト医師の凄腕女医の対決がみられるが、現在のところ女医の判断が勝っている。この失敗しない天才外科医のすごさは、既成概念にとらわれず自分の目で見て(確認)、しっかり考える(思考)ことを怠らない点にある。

 若さや健康を保つ秘訣は、バランスの良い食事、適度な運動、良質な睡眠は必須だが、それ以外にあげるとしたら、ときめき(ドキドキ)、好奇心、ノンストレス(ノンギスギス感)だと思う。これだけ守っていれば、がん細胞だって寄りつかないのではないかと思えてくる。

 がん哲カフェは、このギスギス感を救える!と声を大にして言いたい。

 それは何故か? 多くの人たちが集い、対話し、互いを認め合い、気づきをもたらす。きちんと思考するスタンスは偏りを生み出さないからだ。

【2019/10/21 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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