ここのところ、台風や大雨の害が日本列島をおそい、天候不安定な日が続き体調管理の大変さを痛感している。
9月度の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」は、関東地方を最強クラスの台風が直撃した翌日9日に開催された。前日夜中に激しい風雨に見舞われた関東地方、翌朝の通勤ラッシュは大混乱。「3.11」の時のように3時間かけて目的地にたどり着いたという人も少なくない。がん哲カフェの主宰者の宮原富士子さんは、台風の影響で出張先から戻れず、この日の朝、やっとの思いで東京に戻ってきた。
嵐の後は夏日がもどり猛暑。地球温暖化に伴う世界規模の不気味な気候変化、自然の猛威の前に私たちはどう対処すればいいのか、最近とみに多いので思考停止になってしまった印象は否めない。そんなことを言うのは、地震や台風などの自然災害の被害にあわれた方たちに失礼と知りつつ……。結局のところ、自分たちのできることで支援していくしかないのだが。
がん哲カフェには、常連メンバーの他、参加するかどうかはともかく、時々見学者やがん相談者の参加がある。この日、がんに罹患するご家族の介護の悩みを持った方が相談にこられ、メンバー全員でその方のお話に耳を傾けることとなった。
相談に答えるのはもちろん、主宰者の宮原さん。
深刻ながんを患うご家族の今後のこと、自身がどう向き合うといいのか。
相談者の話に対し、質問を繰り返すことで、少しずつ相手の本音を引き出していく。
相談者も話し、質問に答えることで頭の中で混沌としている考えを整理し、別の角度でとらえ直す。
「考えグセ」は、一人で考えていてもなかなか修正できないものだ。 がんに限らず多くの医療相談を引き受けている宮原さんは、全神経を集中させ、相談者の悩みを引き出していく。私たち他のメンバーは、近くでただ静かにその様を見守るだけ。
言葉の力は大きいが、時にそれは重く感じられることもある。では、じっと相手の話を地蔵になって聞くことが可能かというと、これも案外むずかしい。そう感じている人は多いのではないだろうか。相手との間の取り方は、とても大事なのだ。
私たちが他者に対してできることは限られているが、救いを求めてやってきた方に寄り添い、一緒にお茶をのんで時間を過ごす。聞いてもらうだけで、人は、心の重荷が軽くなるものだ。
長くは生きられないがん患者さんに対しても同じで、空気のように隣にすわり共に夕焼け空を眺め、来し方を思う。それだけでいいのではないだろうか?
今回のがん哲カフェは、そんなことを考えた傾聴の時間。来てくれてありがとう、話にくいことを話してくれてありがとう、という思いを強くもった時間だった。
【2019/9/9 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)