7月21日、参院選挙が終わった。圧倒的な強さをもった党が存在しない選挙だったが、その中で大躍進を果たしたのは、山本太郎氏率いる「れいわ新撰組」(以下、「れいわ」と表記)だった。今年4月に旗揚げしたばかりだからできたてのホカホカにして、比例区で228万票を集め2議席を獲得し話題となった。
れいわの話題はそれだけでなく、獲得2議席が重度障害者だったことが大きい。一人はALS患者の舩後靖彦氏(61歳)、もう一人は重度障害をもつ木村英子氏(54歳)だ。両者とも普段から重度介護サービスを受けているので、国会で仕事をするために彼らが仕事をしやすいように環境作りが必要。国会の歴史をたどると、過去、八代英太氏が車いすで国会にのぞみ郵政相を勤めたことがある。
バリアフリーは国会の外だけで必要なのではない。国会の中でその実例を示すことで、むしろ完全とはいいがたい障害者差別がない社会の実現が期待できるだろう。国会が変わることで、社会が変わるのだ!
7月度の「下町(浅草)がん哲学外来」の「がん哲学カフェ」(以下、「がん哲カフェ」は、この参院選の翌日の22日に開催された。当然、話題は選挙と重度障害者の国会参入だった。
障害者の2人が国会でどのような仕事をしてくれるのか。闘病されているのだから健常者と比べて限られた生命の時間を生きているのは確か。それぞれの時間をどのように生きてこられたのだろうかといった点についても関心がある人が多いことだろう。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、一般的に発症すると10年以内に生命を落とすといわれている難病で、最近やたらクローズアップされるようになった感がある。それだけ患者数が増えてきているということだろう。少し前にALS患者さんの著書を読んだことがあるが、やはりその方も若くして発症し、現在も闘病を続けておられる。半生を綴ったその著書は全体的にポジティブ思考に満ちあふれているが、それでも発症直後の絶望感は深かったようで胸が痛んだ。
がんに関係する人々が集うがん哲カフェ。主催者・宮原富士子さんは訪問薬剤師として在宅診療に関わっておられ、「もっと重篤な病気(たとえばALSとか)があるのに、日本はやたらがんだけが特別扱いされているように感じる」とよく口にされている。
確かに、がんにはがん保険があるし、がん対策基本法があるし、がん患者の有名人は保険会社のCMに起用されて話題になっているし。それだけ罹患率が高い病気だということなのだが。
人生の棚卸しとして自分の歴史・時間を想うのはもちろん重要だが、自身とは違うハンデをもって生きてこられた方の時に想いをはせるのは、とても大事なことだ。
【2019/7/22 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)