勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

個人の尊厳を尊重することについて

 3月は多くの機関が年度末の繁忙期で、学校関係では卒業式や謝恩会などであわただしく、別れや旅立ちの時期でもあります。コロナ禍の中、制限が解除された浅草ではかつての賑わいを取り戻し、卒業式をすませたと思われる(特に)女性たちの姿が目立っています。桜も満開の所がでてきて、上野公園では花見を楽しむ方々の様子が報道されるようになりました。コロナ4度目の春はようやくあれこれ制約のない花見ができ、気持ち的に晴れ晴れしているのではないでしょうか。期間限定の日本特有の行事・美・雰囲気を堪能したいですよね。
  3月の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、春のお彼岸期間中の3月20日に開催されました。
  この日は昨年後半から実施している、「がん哲学外来」に様々な形で参加したいと希望する方向けの「がん哲学」基本のキを学ぶ講座で、一般社団法人がん哲学外来の理事で教育担当を務める「大阪がん哲学外来 メディカルカフェあずまや」主宰者の東英子医師が講師として「個人の尊厳について」という題目で話されました。

 私たちが普段なにげなく使っている言葉「そんげん」「そんちょう」について、東先生は言葉を分解し、
  「尊厳」→ 概念を表現したい時、
  「尊重」→ 行為を表現したい時、に使用する言葉だと説明しました。
  「個人の尊厳を尊重する」とは、その人にとって尊いものを大切に扱うことをさします。では、人はどんなモノを「大切、尊いもの」としているかについては、過去のアンケート調査によると、圧倒的に家族、もしくは家族の絆が占めているとのことです。 日本国内に数多存在するがん哲カフェには、がん患者さん本人、その家族や遺族、がん治療に携わっている医療・介護従事者たちが集っています。参加者である彼等が、自身にとって大切なものが失われそうになった場合、がん哲カフェを運営する側は、傾聴や寄り添いという行為が求められることは言うまでもありません。

 カフェに足を運ぶ方々は「がん」という共通テーマをもっていること以外、個性も背景もそれぞれ違います。それだけに個人の尊厳を尊重しながら運営していくスタンスが必要になってきます。
  ところが、人が集まる所では当然ですが人の数だけ意見があるものです。きちんと自分の意見をもつことは大事ですが、人の意見を否定したり、熱くなって議論になったりすることは好ましくありません。
  日本国憲法では、思想や意見が過激でどうしても自分は同調できないとしても、その人の意見には「反対」であっても、その人が意見をいう自由は「尊重」されなければならないとしています。
  人・意見は皆ちがっていい!とは思いますが、思想や意見が違う人たちをまとめるのは苦労がつきもの、個人の尊厳を尊重した場(空気)の形成のために気を遣うことは確かです。
  この日、全国からオンライン参加したメンバーに、それぞれのがん哲カフェでの現状をきいたところ、さほど極端に意見を異にするケースはなく、なんとか収まりがついているようでした。浅草のがん哲カフェ主宰者の宮原富士子さんは、自身のFBで次のように発信しています。

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【対話の場】

 複数の方がいた時の対話の場というのは、誰を対象に話をするのか。その時にどうしても聞いてほしいという方のお話を中心に聴くのか、公平に話をするのか、色々な形があってよいのだろうが、主宰としては迷うことがある。また、大きな話題提供をもらい、 その話題について話すこともあるだろう。毎回テーマが必要かというとそうでもないかもしれない。主宰の考え方がその場の在り方であってもよいだろうという意見や、公平性を重要視するべきだという意見。

 主宰が複数であるとそれがより複雑になるだろう。あるべき姿というものはなく、その日のその場が、また満ち足りればいいのではないか 昨夜はそんな話をぐるぐると、勝海舟のがん哲の仲間で語りあっていた。
  多くの形があれば多くの意見もでる。いい会だったという人もいれば、自分には辛かったと思う人もいる。WEBが盛んになり多様性は増しただろうと。

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 セクハラ、パワハラ、マタハラ、モラハラ……こういった言葉はある時期から盛んに言葉になりだし、企業活動においてもコンプライアンスの取り組みが積極的になり、「倫理行動基準」がきちんと定められているようです。 カフェの理想的な姿を共通認識として持つことは必要ですが、その時々で、参加した人全員が「心地よい時間」「参加してよかった」「癒された」などと感じる、それこそががん哲カフェが求める「対話の場」のような気がします。

 

※一般社団法人がん哲学外来 http://gantetsugaku.org/

【2023/3/20 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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