勝海舟記念下町浅草がん哲学外来Café

現在(今)に集中し、この一瞬を生きる

 メジャーリーグで活躍する大谷選手がホームランをうつたびに、現地の解説者があげる「スゴ~イ!」が気に入っていて、親しい人たちがすばらしいことを言ったりしたりすると、使ってうけております。するとどういうわけか、言っている自分もスゴイ!ことをしているような気になるから不思議です。オータニさんは、競争の激しい世界で試合に出場できるだけで大変なのに二刀流で結果を出し続けています。常にプレッシャーを感じていることでしょう。事実、少しの間スランプに苦しんだようですが、本来の調子を取り戻しているようでうれしいですよね。ホントにスゴ~イ!です。

 さて、2022年6月度の「勝海舟記念 下町(浅草)がん哲学外来」の「オンライン がん哲学メディカルCafe」(以下、「がん哲カフェ」と表記)は、6月20日夜7時から開催されました。この日は沖縄が梅雨明けした日で、首都圏は蒸し暑い一日でした。そして……、その週の金曜日から日本は全国各地で猛暑日となり、この原稿を書いている(6/29)現在まで連続猛暑日となっています。伊勢崎市、熊谷市といった暑さ厳しい所では40度近い気温を記録し「6月の気温としては観測史上最高」とのこと。「例年にない・・・」「百年に一度の・・・」「異例の・・・」「昨年をしのぐ」「最大級の・・・」という表現が毎年繰り返され、気が付くと日本は熱帯地方の仲間入りをしてしまったようです。
  今年は全国的に早く梅雨入りし、早く梅雨明けしました。梅雨が苦手な人には朗報ですが、同時に夏も短くなってくれればいいのですが、近年の傾向からすると無理のようです。

 話を戻して今月のがん哲カフェは、「大阪がん哲学外来 メディカルカフェあずまや」を主宰している東英子先生(あずま在宅医療クリニック院長)がナビゲーターをつとめ、読書会を行いました。使用したのは、江戸時代の儒学者・佐藤一斎の「言志四録」。「言志四録」は幕末から明治にかけての変革期をいきる日本人の心を支えた書ですが、難解な向きがあるため大学教授で作家の斎藤孝さんがわかりやすく解説した「図解 言志四録」をテキストとし哲学する時間をもちました。構成は1章から5章まで、仕事力、リーダー力、学習力、人間関係力、人生力からなり、気になる箇所を参加者のリクエストでとりあげて考えました。
  どの章も参考にしたい事柄ばかりですが、オンライン講座を通して私が印象に残ったのは次の通りです。

「私たちは心をいつも、今に集中しなければならない」
       ↓

 心は一刻一刻うつっていくものだから、この一瞬を生きることが大事。
(がんや思い病気になったからといって)将来への不安ばかりを思い、過ぎた過去への後悔ばかりするのはネガティブな発想。心はいつも今にいないのはもったいないことであり、心を引きずるとすべてうまくいかない。

 ということを、結果がすぐにでるスポーツでの勝負の場面を例にとり説明している箇所が、具体的で納得しました。オータニさんがスゴ~イと言われ続けるのは、気持ちをさっさと切り替えて勝負の時間に集中しているからなのでしょう。
  情報過多の時代、私たちはこういう貴重なメッセージに触れる機会が多くありますが、頭ではわかっているけどなかなかできないのが凡人の辛さ……と思う人が少なくないのではないでしょうか?

参加者からの感想は次の通りです。

〇こんな昔からマインドフルネスを説いていたことに驚いている。
〇医療従事者は自身のことをきちんとケアできていないと、患者さんをケアすることはできないので、身体と心を整えることは大事なことだと思う。
〇今に集中すると、目の前の小さな幸福を感じられると思う。

 さらにこの日は、参加者の一人(医療従事者)の好意によってマインドフルネスの時間を少しだけもちました。
  既に夏のような蒸し暑い日の夜、目を閉じて瞑想タイム・・・。
  今日も暑かったなぁ~暑さになれなくては~暑さもコロナもどの位ガマンすればいいのかな~そういえば、石川県ではこの日の前日、震度6の地震がおきたんだった~。
  瞑想中なのに、うつろいゆく(私の)心・・・。
  毎日様々なことがおこり、いろいろな感情を覚える中、集中できないとストレスを感じるものですが、そんな時に心が<戻る場所>を確保するコツをつかめば意外にうまくいき、オータニさんのようにスゴイ人になれるかもしれませんよね。
  やはり、歴史と哲学はヒントの宝庫です。今この一瞬をしっかり生きなくては!

※「図解 言志四録」
『言志四録(げんししろく)』は、儒学者・佐藤一斎が40年あまりにわたって書き綴った語録で、指導者のバイブル。また、西郷隆盛や吉田松陰、坂本龍馬、佐久間象山らが心酔した書としても知られています。 今回『言志四録』に着目したのは、非常に優れた「人生の指南書」であり、いまも長く読み継がれているにもかかわらず、その魅力があまり広く知られていないという点に尽きます。 『論語』同様、座右の銘にしたくなる切れ味鋭い言葉に加え、仕事や人づきあい、リーダーの心得など、ビジネスパーソンの役に立つこの本の面白さを、わかりやすい図と共に解説します。

【2022/7/1 がん哲カフェ】(文・桑島まさき/監修・宮原富士子)

 

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